『食い逃げされてもバイトは雇うな』と『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』を読んだ

食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉

「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字〈下〉 (光文社新書)

を読み終えた。

上巻は、数字のトリックや、インパクトについての話と、会計的な視点での経済的な活動(バイトは雇うな等)についての話を書いている。

数字のトリックについては、世の中で、いかに数字をこねくり回して都合のよい結果を導き出しているかについて、具体例を上げながら紹介している。マーケティング関係者が見たら頭が痛いのではないだろうか。紹介されている例は、知っている人も多いので、画期的と言う内容ではないが、世間一般に広く認知されてしまったら、もはや使えなくなると思う。

この手の数字のだましを見るのが嫌いなので、ベストセラーになってくれるのはうれしい。

もう一つ、面白かったのが、株の体験談。『さおだけ屋は〜』の印税で株を、企業研究して買ってみるのと、出鱈目に選んで買ってみるのとで運用成績を比較した話である。結果は、なんと出鱈目に選んだ方が儲かって、企業研究した方が損をしていた。

この手の話は、

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

にも載っていて、結局、企業研究をしても、研究し終わった頃にはその結果は株価には織り込み済みで、儲からない。ランダムに選んでも、インデックス投資と同じ運用成績は残せると言うものだった。やっぱりそうなんだ、と言う感想だった。

この話のくだりは、ランダムに選んだらものすごい高い株を選んでしまって、買えなかった話など、かなり面白い。

下巻の方は、上巻に書いてある考え方(会計的な視点)の限界を述べている(だから、大間違いと書いてある)。新聞の広告を見て、別の著者が、売名のために出した本かと思ったが、よく見たら本人なので、面白そうと思って、上・下巻ともに買ってしまった。

内容だが、「会計的な視点だけは、世の中渡れませんよ」という、至極あたりまえの話だった。最近の、会計ができれば、ビジネスも出来るみたいな風潮をみて、会計士の立場から警鐘を鳴らすものだった。

かなり、良心的な著者だと思う。会計士としては、現在の風潮の方が特なのに敢えてこのような行動にでるとは。下巻の考え方だと、こういう本を出す方が正しいのかもしれないが。

下巻では、小説形式のケーススタディを書いている。これは、『女子大生会計士の事件簿』の売り上げアップを狙っているんだろうな... 小説も上手いが、商売も上手い。