介護分野を、本当に成長産業にしたいなら

介護事業分野を成長産業にと、10年以上も盛んに言われてきた。しかし、10年以上経過しても、全く成長産業としての道筋や実績は見えてこない。

なぜ、成長産業とならないのだろうか。それは、事業主も労働者にも希望の持てない産業だからである。介護分野の売上のほとんどは、政府からの資金によるものである。つまり、最大のお客は政府である。その政府は、本音としては介護等の社会保障費を抑えたいと考えている。市場規模が将来的に頭打ち、もしくは減少してしまうような分野では、優秀な人は起業したいと思わないだろう。

労働者にとっても、介護分野は希望の持てないビジネス構造になっている。売上の価格体系は政府によって決められている。その売上のかなりの部分を会社にピンはねされた残りが、労働者の収入となる。労働者の待遇を上げるために、介護の単価を上げるような議論が時々されるが、単価を上げてもピンはねが酷くなるだけだろう。酷い経営者になると、社用ジェット機なんかを購入してしまうだけだ。

本気で、介護分野を成長産業にしたいなら、介護分野の労働者の最低賃金の規定を大幅に引き上げ、労働者にワーキングプアにならない産業であることを示すべきだ。労働者の賃金を払えないような企業は市場から退場する事になるような競争原理を持ち込むべきである。そうやって強い企業だけが生き残っていれば、その企業がこれから世界的に進む高齢化社会のグローバルマーケットに進出して大きく成長できるようになるだろう。